看却下(かんきゃっか)
『むかしむかしの中国のお話です。とてもえらいお坊様が、数名の弟子を連れて月のない森の夜道をちょうちん一つかかげて歩いていると、一陣の風がヒューッとお坊様たちをおそいました。その風に、弟子の持つちょうちんの火がかき消され、あたり一面が真っ暗闇、鼻をつままれてもわからないくらいの闇の中にお坊様たちは包まれてしまいました。お坊様が「どうする」と問うたところ弟子の一人が一言「看却下」と応え、お坊様はたいそうお喜びになったそうです。』
看却下、すなわち「足もとを見なさい」ということです。何か突発的に事故が起きたとき、自分が窮地に立たされたとき“足もと”すなわち“今ある自分の状況”をしっかりと確認し適切に対応しなさい、という教えです。いたずらに騒いで混乱に陥ったり、風評に左右されて行動を誤ってはいけませんよということです。
情報にあふれる現代社会の中で、本当に大切なものは何かがわかりにくくなっている気がします。好きな物、気に入ったもの、心地よい物に心を奪われ、自らが生かされている存在であることを忘れてしまったとき、目は開いていても大切な物が見えなくなっているのではないかと思います。
私は、水、空気、土、火があって生きています。私は、父、母、兄弟、妻、子どもがあって生きています。私は、学校、同僚、子どもたちがいて生きています。私は、私のまわりにあるすべてのものに生かされています。私にとって、私のまわりのものはすべてかけがいのない大切なものです。
私は、子ども達に「本質を見る目を持ってください」、「すべての人、モノを大切にしてください」、と話しています。学校の中で最も大切なものは「命」です。次に大切なものは「心」です。そして「育ち」と続くのでしょう。
看却下、大震災など瞬時に判断を迫られることも多々あります。決して誤ってはいけない判断も存在します。看却下、私自身常に心に刻んでいる言葉です。