人を育てることは脳を育てること その3 脳を育てる要素

この2枚の写真を見て皆さんはどのようなことを感じますか。

  昭和あるいは大正、そして現代、でしょうか。

初めの写真は、建築素材、建具、照明に暖房、そして家具や食器に至るまで、純天然素材に人々が囲まれています。次の写真は純天然とは言えない人工的につくられた素材に囲まれ、新たに登場した電子機器が私たちを便利な生活に導いているようすが見て取れます。それと同時に、家の存在が大切だったものが個人こそが大切にされなければならないという価値観の変化も感じられます。400~500万年と言われる人類の歴史の中で、この100年で人間の生活様式がとてつもなく大きく変化したことは事実です。人が育つ環境が自然から距離を置き、人と繋がることなく生活できるようになり、孤立傾向が強くなってきているのです。それでは、子どもから大人へ脳が育つときに、この人類の急激な環境の変化は、どのように影響を及ぼすのでしょう。ヒトの脳は成長に伴い「遺伝」と「環境」によって個性あるものに作り上げられていきます。環境こそがヒトを育てると言っても過言ではありません。私は、子育ての中で、意識的に自然の中で過ごす時間を設けることや、人とのふれあいの楽しさを感じさせる環境づくりに配慮することが大切であるとこれまでずっと感じてきました。それは、とても長い年月をかけて自然環境の中で進化を続けた脳にとって必要な事だったのではないかとも思うからです。「自然の中で過ごす」「人とのふれあいの楽しさを感じさせる」ことは、脳を育てるために最も重要な要素であると私は思います。

その上で、脳を育てる要素は、言うまでもなく「睡眠、栄養、運動」です。「睡眠」は脳を休めるためにとても重要です。特に夜10時から深夜2時までの4時間は、最も重要な睡眠の時間帯で、日々の活力はこの時間帯に脳を休めることから得られるとも言えます。睡眠が十分にとれない脳は、考える力が鈍り記憶力や意思決定力が低下します。学校での学習効果が低下するだけでなく友人関係でも弊害が起き不安感も深まっていきます。そして「栄養」です。脳は臓器の中で最も栄養分を必要とする臓器です。そのために、エネルギーが不足すれば思考力が鈍り頭がぼんやりとしてしまいます。朝食を食べずに学校に来ている子どもは、特に集中力や意欲に欠けるような行動が見られます。また、記憶力や認知力の低下も見られます。ただ、食品はエネルギーとなる栄養を摂れば良いのかというとそうではなく、タンパク質やビタミン、ミネラルなど体の調子を整える栄養素をバランスよく摂ることが大切であることは言うまでもありません。糖質や脂質に偏った食事は血流を悪くし、脳に悪影響を及ぼします。血流は脳に多くの酸素や栄養を届け排出物を除去し活発な脳活動を支えます。血流は脳に限らずあらゆる臓器で重要です。その血流を良くするために大切なものが「運動」です。柔軟性を高める運動や瞬発力、持久力を高める運動を楽しく行うことは筋肉をつけ、血流をスムーズにします。そして、「運動」は、脳と繋がる全身の感覚神経や運動神経との連動性を高め身体的な機能を高めるとともに脳を活性化させます。記憶力を向上させ新たな発想を生み出す源となるのです。体を動かさなければ脳も動きません。私は、記憶することがとても苦手で苦労しましたが、歩きながら暗記するととても良く頭に入ることに気づきました。座ってだまって暗記しても頭に入りません。書いたり、声に出したりすると少し入ります。更に立つ、歩く動作を加えるととても暗記がよくできるのです。そして「運動」はメンタルヘルスにとても重要です。思い悩むことがあっても、ちょっとした運動をすると気持ちが落ち着き気分が変わっていきます。そのように考えていきますと、子どもにとっての外遊びがいかに大切であるかが分かってきます。運動不足は寝不足や食欲低下に関わり、栄養の不足は運動意欲を低下させ良い睡眠の妨げとなり、睡眠不足は食欲や運動意欲の低下につながるなど相互に関わっています。「睡眠、栄養、運動」どれ一つもおろそかにはできません。

教育には、家庭教育、学校教育、社会教育という分野があります。これまでの内容は主に家庭生活の中で“脳を育てる要素”をどのように意識すればよいかについて述べてきました。最後に学校教育がどのように脳を育てているかについて述べます。子どもが体を動かして良く遊ぶというのは、目や耳、皮膚などから伝わる感覚刺激を脳に伝え、脳で判断した運動指令を筋肉に送り微細や粗大な運動を滑らかに正確に行うための訓練をしているとも言えます。体を思い通りに動かすことのできない赤ちゃんは、親に守ってもらわなければ生きることが出来ません。子どもは、遊びや自然体験、社会体験、学習を行う中で次第に感覚器→脳→筋肉の連動性を高め自立して行動できる大人へと成長するのです。保育園、幼稚園、学校での教育は、脳を中心とした体全体の機能を計画的にバランスよく発達させるために行われているという風にも言えます。

小学校や中学校では国語、社会などの教科を学び、学級活動や行事などで人間関係作りを学んでいきます。音楽や美術は他では感じることのできない感覚を受け取り、歌や演奏、絵画を通して運動機能を高めます。算数、数学では論理的思考力を理科では科学的な知識や科学的思考力を養います。教科学習は、それぞれ様々な脳の部位に刺激を与え記憶量を増やし思考し行動するためのシナプス(神経細胞間のつながり)を強化する働きがあります。一方で、学級活動や行事などは、人との関わりの中で、協調性や寛容性、議論の中から真理を追究する力などを意図的に身に付けさせることをねらいとしています。ただ、私は学校教育全ての領域で人との関わり方を学ぶという社会性を身に付けることが最も大切であると思っています。知識領域を広げることも議論するノウハウを身に付けることも社会性を向上させる手段となるのだと思います。尊敬する大人や同級生との出会い、さまざまな事象との出会いで感じる、嬉しい、悲しい、怒り、憧れなどの感情を経験することが人間としての脳を育てるために大切な要素になるのです。学校の中で友人や指導者とともに学び、遊び、築き上げ達成感を味わう。それらの刺激が、意思、意欲、集中する力、記憶力、道徳心を養い、知識、語彙力、技術を蓄えて自らの考えにまとめ文章や発言として発信する力となります。学校教育には、脳を育てる要素がバランスよくちりばめられているのです。

参照:自然の中で

参照:自分を作り上げる

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人を育てることは脳を育てること その3 脳を育てる要素” に対して1件のコメントがあります。

  1. I don’t think the title of your article matches the content lol. Just kidding, mainly because I had some doubts after reading the article.

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