運動と脳

「脳を鍛えるには運動しかない!」ジョン・J・レイティ著(NHK出版)という本に、

○運動をさせた子どもは成績が上がる

○運動すると35パーセントも脳の神経成長因子が増える

○運動することでストレスやうつを抑えられる

○運動で5歳児のIQ(アイキュー)と言語能力には大きな差がでる

○運動する人は癌にかかりにくい

○運動を週2回以上続ければ認知症になる確率が半分になる

という見出しがついていました。早速買って読んでみると、アメリカで活躍する医学博士の著書で、運動による脳の活性化について科学的に論じた内容のものでした。

小学校の運動会では、子どもたちが曲に合わせて踊り、器械体操を行い、走り、跳び、綱を引きます。また、騎馬や輪を作るなど子ども同士が体を触れ合う場面も多くあります。全身の感覚器官をフル動員させて全身を運動させる様子に、見る者は思わず引き込まれてしまいます。

子どもも含めて現代人の病巣は、まさにこのように感覚器を使い脳をフル活用しながら全身を動かす機会が極端に減少していることにあるのではないでしょうか。私の母が子どもの頃は、ガスはなくマキや炭で煮炊きをし風呂を沸かしていたそうです。母は8人兄弟でしたから洗濯物も大変な量だったと思います。家族全員が生活のために否が応にも体を動かして働き、何とか生きていたという人が多かったのではないでしょうか。

家電製品が整い家族の構成人数が減り、円が強くなり海外の品物を安く買うことができる現代の日本人は、80年前の日本では考えられないほど体を動かさずに生活できるようになったのだと思います。そのような現代に、うつ病や不安障害などの疾病が急激に増えているのは当然の結果なのかもしれません。何故なら、人の体は、精神と肉体が相互的に作用し高めあって安定を図っているからです。精神のみを鍛えストレス耐性を高めることは無理なのです。体を動かさずに生活できるようになった日本人は、意図的に運動をする必要があるのです。

古代ギリシアのあの謎のような文明を支えた教育は、ギムナストすなわち体育教師による教育が大きく影響していると考えられています。格闘技や円舞によって感覚器と運動との連動性を高める教育が精神の安定と高い思考力の礎となったということです。子どもにとってバーチャルではなく現実にある生のモノや人に触れ全身を使って運動することほど育ちにとって大切なことはありません。

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