カリキュラム・マネジメント
「うちの子は、算数で計算はできるのだけれど文章問題になると分からなくなってしまう。」という親の言葉をよく聞きます。教員の中でも、「テストの時、問題文や説明文が長くなると読むのをあきらめてしまう。」という話をよく聞くことがあります。では、問題文や説明文を読む練習を学校で行っているかというと、特別にそのための練習は行っていないように思います。結局、多くの問題に取り組む中で、問題文や説明文を読み取る力をつけさせることになりますが、なかなかそこまで問題練習をすることができない子どもが多く、結局、算数の文章問題や様々な教科の説明文の長い問題は解答率が低くなってしまいます。これは、各教科共通の悩みで、国語で読解力をもっとつけてほしいと国語任せにしても問題解決に至らないのが現状です。
こういった、その学校にある一つの課題を学校全体で各教科領域が力を合わせて克服しようと考える取り組みがカリキュラム・マネジメントです。一般の方には馴染の薄い言葉だと思いますが、本年度小学校、来年度中学校で全面実施される学校の指導の基本となる学習指導要領の大きな柱の一つになります。今度学校に行ったときに「この学校では、カリキュラム・マネジメントでどのような取り組みを行っているのですか」と先生に聞いてみてください。各学校で、その学校の主な課題に対する取り組みが実施あるいは計画されているはずです。
さて、最初に書いた問題文や説明文を読み取る力をどのようにつけていけば良いでしょう。私は、授業の中で、もっと教科書を使った授業ができないものかと考えています。最近の教科書は各学年の子どもの発達に即した漢字や言葉使いを使い写真や図表を多く取り入れて、とても分かりやすく内容が理解できるようになっています。まず、子ども達に教科書を読ませて何が書いてあったかを発表させてみてはどうでしょう。子どもによって着目するところは違いますからそれらをつなぎ合わせ核心となるところは先生が突っ込んで質問をしていく、そのような教科書を各自が読み解くという活動を多く取り入れた授業が子ども達の文章を要約し整理する力を育てるのではないかと思います。先生は先生であるために、「子どもに教えたい」という気持ちが働きます。特に、授業の核心部分はその周辺事象を整理し子どもに気付かせたいと知恵を絞ります。授業とは、先生が問題を提起し先生が質問し核心部分の考え方に導いていくものだと思っている教員が多いのではないでしょうか。もちろんこう言った考え方は正しいのですが、少し発想を転換して子ども自身が核心部分に他者と協力して迫るという授業を考えても良いのではないでしょうか。ただ、そこまで大きく授業を捉えなおすことをしなくとも、学校全体で「読み取りの力を向上させる」という目標を立て、そのために授業のどこかの場面で教科書を子どもに読ませる時間を取り、読み取った内容を子どもに発表させるという活動を各教科共通で行うことができれば、子ども達の文章を読み取る力はついてくると思います。
これはカリキュラム・マネジメントの一例にすぎませんが、改めて学校の課題は何なのか、そしてそれを克服するために各教科領域で共通して何ができるのかといったカリキュラム・マネジメントの議論に、親も首を突っ込んでいくことも「あったらいいなあ」と思っています。そして、学校だけでなく家庭学習の中でも「親子で教科書を読もう」などと学校で力を入れていることを家庭でも一緒になって行うことができたら更に大きな成果が得られることでしょう。教科指導がばらばらで行われるのではなく、各教科がタッグを組み同じ方向を向き、更に保護者がそれを援護する学校ができあがったらすごいなあと思います。