経済の世界でもインクルージョン?

最近経済に関する報道で「インクルージョン」の言葉を聞きました。教育において「インクルージョン」という言葉は馴染の深い言葉で、日本では、特殊教育から特別支援教育への転換となる基本的考え方になった理念とも言えます。その報道では「インクルージョン」を「誰一人取り残さない社会」と説明していました。教育でもその説明と同様、誰かを取り残す「エクスクルージョンする」ことなく全ての子ども達を包み込む「インクルージョンする」教育を意味します。そもそも教育においての「インクルージョン」とは、1994年にスペインのサラマンカで92か国の政府や国際機関を代表する人々が集まり「万人のための教育」をさらに前進するために「インクルージョンの原則」~すべての人を含み、個人主義を尊重し、学習を支援し、個別のニーズに対応する施設に向けた活動の必要性の認識~を意味します。まさに「誰一人取り残さない教育」を個に応じながら同じ場で行っていこうという考えです。

私はこれまで経済の世界とは、「ジャパン アズ ナンバー1」や「勝ち組」「負け組」など、もっとも厳しい競争が繰り広げられる世界だと思っていました。その経済の世界で「誰一人取り残さない社会」とはどういうことなのだろうと興味を持って見ていると。人種や性別、障がいなどの理由から排除されることのない職場づくりに力を入れるという内容でした。今、企業に対して求められていることは、ただ利益を上げればいいということではなく、「インクルージョン」や「法令遵守」「環境対策」などへの積極的な関りが求められているのです。中でも最近特によく使われる言葉は、2015年9月に国連が定めた「持続可能な開発目標」の十七の具体目標」SDG’sとESG「環境・社会・ガバナンス」です。企業には気候変動や人権問題などの世界的な社会問題に取り組む姿勢が必要とされているのです。そのような姿勢に反する企業は、消費者や投資家から支持が得られず収益を上げることが難しいという実情があるのです。そこで、企業は「インクルージョン」を含む人権問題や社会環境に配慮した企業姿勢を強く打ち出し、実際に人権問題や社会環境を改善するための取り組みや製品、サービスの提供を行おうとしているのです。

ただ、SDG’sやESGを謳っている企業の中には、内実が伴っていない企業もあるようで、どこまで本気で真摯に取り組んでいるのかを見定める必要があるということも言えるそうです。教育においても、まったく同じことが言えるのではないかと思うことがあります。取り組みが表面的に進められるのではなく、本当に「すべての人を含み」「個人を尊重し」「学習を支援し」「個別のニーズに対応する」施設の充実に向けた取り組みがなされているのかをもう一度確かめながら進めていく必要があるのだと思います。個別のニーズが強ければ強い子どもほど自分の言葉や体で意思を伝えることが難しくなります。その子ども達の心の奥底にある気持ちを十分に感じながら本気で「インクルージョン」の取り組みを進めていきたいと思います。

参照:教員、親そして人としての覚悟

参照:私たちは「障がいを持つ」とは言いません

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