人を育てることは脳を育てること その4 脳を育てる際の留意点

私が、教育相談センターに勤めていた時に、毎年精神科医による講座を学校の先生方を対象に行っていました。その講師のお医者さんは、仕事でも趣味でもいいので柱をたくさん持つことの大切さを毎年お話されていました。仕事だけの人や一つの趣味や活動にのめりこんでいく人よりも、様々な趣味を持ちさまざまな活動をする人の方が精神疾患のリスクは小さくなるということでした。脳は、一つのことに徹底して取り組むことでその活動に必要なシナプス(神経細胞間のつながり)が強化されていきます。タクシーの運転手さんは、海馬後部(空間記憶)の領域が大きくなり、音楽家は聴覚野の領域が大きくなります。また、ヴァイオリニストは左手の指の表象の領域は大きいが、右手の指の表象の領域はふつうだそうです。必要とされる部分のシナプスは太くなり領域も大きくなっていくのです。これは、脳の可塑性と言って、脳は使えば使うだけその部分は強化され領域も大きくなりますが、使われなければ縮小するという脳が柔軟に変化する特質を持っているからです。この精神科のお医者さんのお話によれば、タクシーの運転手さんには、休日には別の楽しみを持つようにするといいよと言っていることになるのでしょう。プロのスポーツ選手に憧れる子どもは大勢いると思いますが、別の柱も持つことができるよう勧めることが大事なのかもしれません。この話を思い出し、私自身いくつになっても脳の様々な領域を刺激し続ける大切さを感じ行動しています。

脳は、使えば使うほど関係するシナプスは強化されていくというのであれば、幼い頃から学習環境を整えていけば子どもの能力をどんどん伸ばすことができるのでしょうか。私は、このとき学習とストレスとの関係が重要になると考えています。子どもにとって大きくストレスを感じることがない課題であれば、与えてあげていいと思います。子どもが楽しみながら興味を持って取り組める課題は、子どもの能力を伸ばすことができます。ただ、持続できない課題やその課題に対し表情をこわばらせてしまうような様子が見られる課題は、やり方を変えるか、まだ与える時期が早いとあきらめる必要があります。子どもによって能力や興味の対象は大きく異なります。大人が課題を与えるときは、子どもの現在値を良く把握しストレスの多くかからない程度の課題を設定する必要があります。また、その年齢で身に付けさせたい能力は何なのかをよく考えることが最も大切だと思います。これは、成人になっても同じで、人によって得意とする能力の領域は違いますし、興味関心の分野もさまざまです。ストレスがかかりすぎない内容を広く浅く楽しみながら続けることが脳をバランスよく活性化させるための大切な方法です。若者にとって職業選択は一生の重大事ですが、脳がどのように作られるかを決める、脳づくりにおいても一生の重大事なのです。

参考文献:「脳の学習力」子育てと教育へのアドバイス、(箸)S.Jブレイクモア、Uフリス(訳)乾敏郎、山下博志、吉田千里 岩波書店

参照:背伸びとジャンプ!

Follow me!

人を育てることは脳を育てること その4 脳を育てる際の留意点” に対して1件のコメントがあります。

  1. Can you be more specific about the content of your article? After reading it, I still have some doubts. Hope you can help me.

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です