わけ合えば
「ここに、一つのりんごがあります。あなたは、このりんごを、自分一人で食べるのと、家族みんなで分け合って食べるのとでは、どちらがおいしいと感じますか?想像してみてください。」と生徒に問いかけました。この問いかけは、私の前任校の初代校長が、児童に向かって問いかけをしたものを、今は六十一歳になる初代卒業生の方から伺い、現任校で生徒に問いかけてみようと思って話をしたものです。前任校は昭和42年(1967年)開校ですから、日本が高度経済成長期に向かって進んでいる頃の話で、少しずつ人々の生活は豊かにはなってきたが、まだまだ貧しさも残る、そんな頃だったと思います。
インターネット社会に生きる現代の中学生は、心の中でどのような答えを出したのでしょう。話の中ではあえて答えを聞くことはしませんでした。でも「分け合った方がおいしい」と答えてくれると嬉しいなと思いながら話を続けました。
私は、ちょっとしたお菓子でも、家族で分け合って食べると何かおいしくなります。そこには、「おいしいね」とか「甘味が強くなくてちょうどいい」などの会話があります。人と人が肯定的につながり一つの和ができるからではないでしょうか。今の世の中は、孤立する傾向や、権利意識、不安感が強くなり、対立の構図が進んでいるようで心配です。人は一人では生きられない、と言うのは昔の話なのでしょうか。何か問題が生じたときに、批判したり排除したりするのではなく、全ての人が手を取り合い共に解決策を考える世の中こそが、私は持続可能な未来に必要な考え方だと思っています。
そんな時に、相田みつをさんの「わけあえば」という詩が目に留まりました。限られた地球を、限られた食べ物を、奪い合うのではなく分け合う社会を築かなければいけないと思います。